近年、学生の初任給に対する意識が変化しており、「希望初任給25万円」という基準値が定着しつつあります。
本記事では、最新データをもとに採用担当者として知っておくべき傾向と対応策をまとめます。
調査データで見る「25万円希望」の実態
就職する際、最低限ほしい初任給は? 大学生・大学院生に聞いたところ「25万~26万円未満」(26.5%)と答えた人が最も多いことが、マイナビ(東京都千代田区)の調査で分かった。
2位以下は「30万円以上」(17.8%)、「20万~21万円未満」(14.1%)、「23万~24万円未満」(9.1%)、「28万~29万円未満」(6.4%)と続いた。
全体的に前年より金額が上がっており、「学生の初任給に対する期待が高まっていることが分かる」(マイナビ)

ほしい初任給の理由を尋ねると、最も多かったのは「行きたい業界・なりたい職種の平均初任給を参考にしたため」(36.6%)だった。
以下「自身の学歴やスキルに見合った金額だと思うため」(33.7%)、「特に根拠はなく、何となくその金額が理想だと思った」(18.8%)、「インターンシップ・仕事体験先の企業(もしくは社員)の話を聞いて参考にして」(11.6%)が続いた。
調査対象は2027年3月卒業予定の全国の大学生、大学院生1206人(文系男子172人、文系女子462人、理系男子276人、理系女子296人)。調査期間は8月20~31日。
複数の調査で、大学生の希望初任給が「25万円前後」に集中していることがわかっています。
- ITmediaの調査:大学生・大学院生の26.5%が「25~26万円未満」と回答
(出典:ITmedia ビジネスオンライン) - 毎日新聞の報道:「少なくとも25万円」が最多(26.1%)
(出典:毎日新聞) - マイナビ調査:「25~26万円未満」が前年10.8%→26.5%に上昇
(出典:マイナビ キャリアリサーチ)
これらを総合すると、「25万円」が大学生の初任給希望額として“心理的基準値”になりつつあるといえます。
なぜ「25万円」が支持されるのか? 学生心理と背景
老後の貯蓄が足りない
年金2000万円問題や人生100年時代など、長い人生を歩むことが身近になり、生活を続けるためのお金について不安が強まっていることが考えられます。また年金が今と比べて支給額が安くなることも不安要素として強いです。
物価高・生活コスト上昇
家賃、交通費、通信費などの生活費が上昇しており、「最低でも25万円は必要」という感覚を持つ学生が増えています。
業界・職種の平均を参照
HRzineの記事では「志望業界の平均初任給を参考にした」という学生が36.6%。
求人情報サイトやSNSを通じ、他社給与を比較して希望額を決める傾向が強まっています。
情報拡散と基準値の定着
「初任給25万円」という数字がメディアやSNSで繰り返し目に触れることで、学生の中で“相場”として定着しています。
採用市場の引き上げ傾向
企業側も賃上げ圧力を受け、マイナビ調査では「初任給を引き上げる予定」と回答した企業が54.1%に達しています。
採用担当者が取るべき対応戦略
給与制度の透明化
求人票や採用サイトで、基本給・手当・残業代などの構成を明示することで、学生に安心感を与えます。
差別化できる給与設計
すべての職種で25万円以上が難しい場合は、職種・勤務地・スキル別に報酬テーブルを設け、明確な説明を行うことが効果的です。またすでに企業型DCに移行している企業が多いですが、老後資金を効果的に貯蓄できる仕組みがあることを伝えることも効果的です。(例:企業型DCで月に2万円貯蓄することが出来る。40年積み立てると〇〇〇〇万円の退職金を貰えることになる。)
採用ブランディングに活用
「学生の声を反映した初任給制度」や「待遇改善への取り組み」を採用サイト・パンフレットで訴求するのも有効。
ただし、給与ばかりを強調しすぎると「成長支援が弱い企業」と見られやすいため注意が必要です。
フィードバックループの構築
内定者アンケートや入社後フォローで「給与満足度」を調べ、次年度の採用戦略に反映させましょう。
今後の展望とリスク
「初任給25万円ライン」が定着すると、企業間の賃金競争が激化する可能性があります。
一方で、無理な引き上げは経営負担にもつながるため、給与だけでなく「キャリア支援」「成長環境」も含めた総合的な魅力設計が重要です。
まとめ
複数の最新調査によると、大学生・大学院生の希望初任給で最も多いのは「25万円前後」。
これは物価上昇や情報流通の変化により、学生の期待値が上がっている結果といえます。
採用担当者としては、
を軸に、給与面・成長支援・働きがいの三位一体で採用力を高めていくことが求められます。
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