採用面接で「御社のSE(システムエンジニア)の1日の流れを教えてください」と聞かれることがよくあります。
私は落ち着いている一日のスケジュール以外にも、一番忙しい日の話をするときがあります。
それは、「1日中会議とレビューに追われ、自分のコードを書く時間が1秒もないまま夜を迎える日」です。
システムエンジニアが本当に「忙しい」と感じるのは、単に作業量が多い時ではありません。
自分の作業時間が細切れに分断され、集中力が削り取られる1日中会議になってしまう日です。
今回は、そんなリアルな1日をSE経験のある現役IT人事が解説します。
就職や転職活動中の方に入社後のギャップが少なくなるようにプロジェクトのリアルをお伝えします。
【タイムスケジュール】会議5件に支配されたSEの1日

中堅クラス以上のSEになると、プレイヤーとしての実装能力だけでなく、チームの品質を守る「レビュー」や、関係各所との「調整」が業務の主軸になります。
以下の表はあるチームリーダーの「会議漬けの1日」をまとめたものです。
システムエンジニアの「会議地獄」タイムスケジュール
ウォーターフォールモデル型の開発案件で設計工程でのスケジュールを例にお伝えします。
この表からもわかる通り、日中のほとんどが「話すこと」と「確認すること」で埋め尽くされています。
- 09:30①チーム朝会(MTG)
昨日の進捗共有。遅れているメンバーのフォロー方針を決定。メンバーに問題が発生していないかつ発生しそうにないことを祈ります。。
- 10:30②設計レビューA(MTG)
後輩が作成した設計書のレビュー。考慮漏れを指摘し、再検討を指示。
- 11:30内職・クイックランチ
13時からの会議でどうやって話をするか考えながら、デスクで食事。休憩時間は実質ゼロ。
- 13:00③クライアント進捗報告会(MTG)
進捗の遅れをどうリカバリするか、顧客への説明と交渉。厳しい追及が入ることも。
- 14:30④設計有識者レビューB(MTG)
自チームのメンバーが作成した設計書を有識者にレビューしてもらう。上手くいかないと厳しい言及が入り、資料の構成や考え方の見直しが入ることも。
- 16:00⑤別チームとの連携会議(MTG)
リリース当日の手順と環境設定の最終確認。別チームが作成しているシステムがどう動くのかや自チームにどのような影響があるか確認する。前回の話から変わった点があった場合、手戻りが発生してしまうことも。。
- 17:30割り込みタスクの消化
会議中対応できなかった後輩が作成した設計書の再レビューやメールやチャットできた質問の返信などを急いで消化。この割り込みタスクがなければどれだけ効率よく自分の作業ができるかと思う日があります。
- 19:00ようやく「自分の作業」開始
全ての会議が終了。ここから今日1日の決定事項を反映した実装やドキュメント作成を開始。自分が担当している設計がある場合はこの時間から作成。
- 21:30深夜の集中タイム
静まり返ったオフィス(または自宅)で、ようやく重いロジックの構築に没頭する。自宅にいると周りにヘルプを依頼しずらいため出社して有識者にすぐ確認したり後輩に依頼したりした方が効率的なため出社することが多い。
- 24:00業務終了・退勤
明日の朝の会議準備を終え、終電に間に合うよう帰宅。
このように、日中の5つの会議によって、SEのメイン業務であるはずの「作る作業」は、必然的に夜間へと押し出されてしまうのです。
会議中にメールやチャットの返信をすることもありますが、重要な会議が重なっている場合は発言やフォローをしないといけない場合があるため基本会議以外の時間にメールやチャットの返信作業をします。
なぜ「会議」と「レビュー」がSEを追い詰めるのか?
人事の視点から現場を見ていると、SEの多忙さの本質は「時間の短さ」ではなく、「コンテキストスイッチ(文脈の切り替え)やマルチタスク」による脳の疲労にあることがわかります。
コンテキストスイッチの罠
1日に4回も5回も会議が入ると、SEの脳内では以下のような現象が起きています。
このように、1日のうちに何度も「脳のモード」を切り替える作業は、想像以上にエネルギーを消費します。
一つの作業を終えて次の作業に移る際、脳が完全に集中状態(フロー状態)に入るまでには約15分から20分かかると言われています。会議が細切れに入っている日は、この「フロー状態」に一度も入れないまま1日が終わってしまうのです。

会議中もチャットの通知がたくさんくるため集中できる状態になれない時がありますよね。
レビューの重圧
特に「レビュー」は、単なる確認作業ではありません。
「ここで自分がバグを見逃したら、後の工程で大問題になる」という責任感が伴います。
期限が迫っている中でのレビューは、スピードと正確性の板挟みになり、精神的な摩耗が激しい業務ですし、相性が悪そうな有識者レビューは胃が痛いですよね。
締切直前の「デッドライン」という魔物

スケジュール表にある通り、期限が近い時期のSEは常に「時間との戦い」の中にいます。
しかし、IT人事として注視しているのは、その「時間の使い方」の中身です。
予期せぬ「手戻り」
16時の会議で発覚した「認識齟齬やシステムの変更点」などは、その最たる例です。リリース直前に仕様の不整合が見つかると、これまで積み上げてきた数週間分の作業が水の泡(手戻り)になる恐怖があります。
「今から修正して、再テストをして、明日のリリース判定に間に合うか?」
このプレッシャーの中、SEは震える手でキーボードを叩き、深夜までリカバリ作業に当たるのです。
【IT人事の分析】会議が多いSEほど「評価」される矛盾
皮肉なことに、組織において「会議やレビューに引っ張りだこ」の状態は、そのエンジニアが極めて優秀であることの証でもあります。
単に「コードを速く書く人」よりも、このように「チーム全体の生産性を高め、リスクを未然に防いでいる人」は高く評価されます。
しかし、本人は自分の作業が進まないことに強い焦りを感じているケースが多いのも事実です。
この「自己評価」と「他者評価」のギャップが、SEの燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因になることがあります。
会議地獄を生き抜くための「人事直伝」サバイバル術
もしあなたが今、この過酷なスケジュールの中にいるなら、以下の4つのアクションを検討してください。
① 「ノー・ミーティング・デー」または「集中タイム」の死守
週に半日でも、あるいは午後の2時間だけでもいいので、カレンダーを「ブロック」してください。
人事制度としても、最近では「集中タイム」を推奨する企業が増えています。
会議を入れない時間を強制的に作ることは、チーム全体の生産性を上げるための「攻めの守り」です。

出社しているとこの会議にも出てほしいや質問したいみたいなことが出てくると思います。その際は週に1回だけでもテレワークをするなど検討するのが良いです。他の日に業務のリカバリーをする覚悟で!
② レビューの非同期化(ツール活用)
会議室に集まって1枚の設計書を囲むスタイルを止め、GitHubやGitLabなどのツールを使った非同期レビューに移行することです。自分のタイミングでコメントを残せる環境を作ることで、細切れの時間を有効活用できます。
③ 「完璧なリーダー」を諦める
全てのレビューを自分一人で抱え込まず、次の世代のメンバーに権限を委譲(デリゲーション)することも重要です。
「自分がやった方が速い」という考えを捨て、「自分が関わらなくても回る仕組み」を作る。これが、多忙を極めるSEが次のステップ(マネージャーやスペシャリスト)へ進むための必須条件です。
④「NO」と言えるコミュニケーション力を磨く
「何でも引き受けてくれる良い人」は、現場では便利に使われて終わってしまうリスクがあります。 「今のリソースでは、このタスクを追加するとリリースの品質が落ちます。どちらを優先しますか?」 このように、感情ではなく「リスク」と「事実」に基づいて交渉するスキルが、自分を守る盾になります。
まとめ:その忙しさは、あなたが「必要とされている」証拠
システムエンジニアのリアルな1日は、華やかなIT業界のイメージとは裏腹に、泥臭い調整と、責任の重いレビュー、そして自分との孤独な戦いの連続です。
1日5件もの会議をこなし、期限のプレッシャーに耐えながら深夜まで作業を続ける――。
これは決して「効率が悪い」わけではなく、あなたがそのプロジェクトにおいて代替不可能なキーマンになっているからこそ起きる現象です。
就職・転職活動中でIT業界のクリーンなイメージに惹かれている方へ。
入社後に『こんなはずじゃなかった』と後悔しないよう、現場の厳しさとやりがいの両面をお伝えし、理想と現実のギャップを埋める一助になれば幸いです。
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