「高校の授業料が実質無償化される」──聞こえは良いですが、その裏側で政府・与党は『高校生の扶養控除』を縮小する方向で検討に入ったと報じられています。表面的な“負担軽減”と、税制上の調整がどのように噛み合うのか、家計に与える実際の影響を見ていきます。
今、報じられている「縮小案」の中身
報道によれば、現在議論されている主な案は次の通りです。
- 所得税の扶養控除(高校生相当分)を現行の38万円→25万円程度に縮小する案。
- 住民税の控除額も33万円→12万円程度に引き下げる方向で検討されているという報道があります。
ただし、複数報道とも強調している点は「まだ最終決定ではない」こと。
来年度の税制改正で議論が進む段階です。
なぜ「今」この議論が出ているのか(背景)
背景には次のような流れがあります。
- 児童手当や高校無償化の拡充:近年、児童手当が高校生まで拡大や、高校の実質無償化が進んでいます。これに伴い、政府は子育て支援の総合的な見直しを進めています。
- 税制の公平性・高所得者優遇の是正:扶養控除は所得税負担を減らす効果があり、所得の高い世帯ほど税額軽減額が大きくなります。無償化の恩恵に所得制限が撤廃されると、高所得者が相対的に大きな恩恵を受けるとの指摘があり、是正を図る狙いがあります。
世帯(家計)への影響:誰が得をして誰が損をするのか
影響は世帯の所得水準や高校が公立か私立かによって分かれます。ポイントを整理します。
- 低所得〜中所得世帯:児童手当や高校無償化の拡充によって直接的な教育費負担は軽くなる可能性が高い。ただし、扶養控除縮小による税負担増が相殺するかどうかは世帯ごとの収入構造次第。
- 高所得世帯:従来は扶養控除で大きな減税メリットがあったが、縮小されれば税負担が増える。無償化の恩恵(所得制限の撤廃等)と合わせて再配分を図る政策意図が読み取れます。
加えて、研究や過去の議論では「扶養控除の変更が家計消費に与える影響」や「高校無償化との組合せで二重の不公平が生じる」といった指摘もあります。政策設計次第で意図しない負担増が生じるリスクは無視できません。
批判と懸念点
報道・ネットの反応を見ると、主な批判は次のとおりです。
- 「子育て世帯への逆風」:教育無償化で恩恵を期待していた世帯からすれば、税制面での控除縮小は負担増に映る。
- 「時期尚早ではないか」:まだ決定前なのに議論だけで不安が広がるとの声。過去には縮小案が先送りされた例もあります。
- 「再分配の公平性の議論不足」:高所得からの税の是正を目指すなら、他の施策(所得再分配や学校支援のターゲティング)との整合性をどう取るかがカギ。
今後の見通し(スケジュール感)
現時点(報道時点)では「検討」段階で、税制改正大綱や国会審議で最終決定される見込みです。時期については過去の改正スケジュールなどを踏まえると、実施時期が数年先になる可能性や、政局・与党内調整で変更される余地もあります。結論が出るまでは情報を注視する必要があります。
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