三菱UFJ、「55歳での一斉給与引き下げ」廃止へ — 定年65歳化と人事への本当の影響

三菱UFJ銀行が2027年度から、従来あった「55歳を契機とする給与の一斉引き下げ」を廃止し、定年を60歳から65歳に延長する方針を固めたと報じられました。意図は「経験豊富な世代の活躍促進・人材確保」。人事制度・賃金設計・キャリアパスに与える影響は大きく、人事部は即時に制度見直しと現場対応の準備を始める必要があります。


何が発表されたか(ポイント)

  • 55歳での給与引き下げを廃止(2027年度導入の方針)。
  • 定年を60歳→65歳に延長。長期的な雇用維持を見据えた施策。
  • 併せて若手の待遇改善(賃上げ)を進める方針で、2026年度に若手を中心に最大約7%程度の賃上げを計画しているとの報道もあります。

背景:なぜ今この変更か

  • 銀行業界では50代前半でグループ会社や関連先へ出向する例が多く、出向せず残る行員については業務量を抑え給与を下げる慣行が存在しました。今回の廃止は、社内で経験を継続活用したい人材を引き留める狙いがあります。
  • 人手不足・高齢化の進行と、長期的なスキル継承(レガシー知識や与信判断など)の重要性が増す中で、年齢で区切る処遇は見直し対象になっているという流れです。

人事(HR)にとっての直接的インパクト

  1. 賃金体系の再設計
    • 「55歳で給与を切る」前提の等級・スケールを廃止する必要。等級幅・昇給テーブルを年齢ベースから職務・成果ベースへ移行する作業が必須。
  2. キャリアパス/ジョブデザインの見直し
    • 55歳以降も現場で働き続けるケースが増えるため、役割(業務量・業務難易度)の再定義、複線的なシニア職務設計が必要。
  3. 人件費予算の長期試算
    • 定年延長→在職年数増加 → 中高年の人件費総額が上がる可能性あり。中期(3〜5年)の給与・退職給付負担を再試算することを推奨。
  4. 人事制度運用(評価・報酬の透明性)
    • 「年齢低下」の説明責任が消える一方で、パフォーマンスと報酬の連動性を明確にする必要。曖昧な運用はモチベーション低下を招く。
  5. 労使対応・コミュニケーション
    • 組合や従業員向け説明会、Q&A整備、IT(給与計算システム)改修スケジュールなど、段取りを定める。特に給与改定・定年延長は労使協議の対象となり得る。

想定される波及効果(業界トレンド)

  • 三菱UFJの決定は大手行で先行事例となるため、他行や金融業界全体に同様の見直しが波及する可能性が高いです。中堅・中小企業でも「55歳ライン」に依存する処遇を見直す動きが加速するかもしれません。
  • 企業の55歳以上の採用活動がより活発になる可能性があります。シニアバイトが増えている中で企業が55歳以上の人材の放出を防ぐことがより増えていくことで警備・交通誘導や清掃、配送・引っ越し・ドライバー職などの人材不足が将来的により顕著になる可能性があります。

参考・引用(主要ソース)

三菱UFJ銀、55歳の「給与一斉引き下げ」廃止へ…定年も65歳に延長し人材確保

55歳の給与引き下げ廃止へ 三菱UFJ銀、定年延長も


まとめ(人事担当者への提言)

三菱UFJの発表は「年齢で線引きする処遇」を見直す潮流を加速させます。人事は単に制度を変えるだけでなく、仕事の定義(Job)・評価(Performance)・報酬(Pay)の整合性を早急に整え、労使・現場への丁寧な説明とシステム対応計画を立てることが不可欠です。制度変更は採用競争力や従業員エンゲージメントに直結します。まずは上のチェックリストでギャップを洗い出してください。

この記事を書いた人
でんちゃん

一児の父。人事として6年、採用・教育・労務・人事制度などを経験してきました。これまで200名ほどの方と面接を実施してきたので就職・転職に関するノウハウがあります。またExcelを用いたデータ分析が得意です。
娘が生まれ日々のすさまじい成長を目の当たりにしています。
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