「手に職をつけたい」
「IT業界は将来性が高そう」
という理由で、新卒や転職からシステムエンジニア(SE)を目指す女性が増えています。
しかし、その一方で「SEは男性社会でハードそう」「自分には向いていないのでは?」という不安の声も多く耳にします。
私はIT企業の人事として、これまで数百人のエンジニア採用やキャリア相談に携わってきました。結論からいうと、「性別」が理由でSEに向いていないということは一切ありません。
本記事では、公的なデータに基づいた女性SEの割合や、なぜ「向いていない」というネガティブな噂が流れるのか、その真実を人視点で解説します。
数字で見る女性SEの割合と推移
まず、客観的なデータから業界の現状を把握しましょう。
厚生労働省や総務省の調査、また「IT人材白書」などのデータによると、IT業界全体における女性比率は約20%〜25%前後で推移しています。

| 職種・区分 | 女性の割合(概ねの目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| IT業界全体 | 約21% | 緩やかに増加傾向にある |
| システムエンジニア(SE) | 約18%〜20% | 専門性が高く、キャリア継続率が向上中 |
| Web系エンジニア | 約25%〜30% | 働き方の自由度が高く、女性に人気 |
かつての「3K(きつい・帰れない・給料が安い)」と呼ばれた時代に比べると、女性の割合は着実に増加しています。
特に最近では、大手SIer(システムインテグレーター)を中心に、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進により、新卒採用の3割〜5割を女性にする目標を掲げる企業も増えてきました。現場の雰囲気は、皆さんが想像している以上に急速に変化しています。
なぜ「女性にSEは向いていない」という声があるのか?5つの誤解と真実
ネット上で「女性 SE 向いていない」というキーワードが目につくのは、過去の劣悪な労働環境や、古い偏見が残っているためです。

人事の立場から、よくある5つの理由を検証します。
① 体力的にきつい(深夜残業・休日出勤)
昔のSEは「納期前は徹夜が当たり前」という過酷な労働環境がありました。
現在は働き方改革や労働基準法の遵守、テレワークの普及により、労働時間は劇的に改善されています。人事としても、過度な残業は「経営リスク」と捉え、是正に動くのが今の時代の常識です。

改善されてきたとはいえ、各工程の納期前やリリース後のシステムトラブルが発生した場合は、長時間労働が発生する可能性はあります。
私は数年前SEをしていた時、納期に間に合わなそうだったためテレワークで深夜2時まで会議をしていた経験があります。
この経験から改善されたとはいえ、精神的にも体力的にもきついタイミングがあるのは事実です。
新卒や中途で未経験で入った人はできることが限られている(最初は何もできない)ため、最初は残業時間が長くなるのはあまり考えられないです。
特に深夜までに及んでしまう突発的かつ緊急な業務を新人に任せるようなことは先輩社員が許可しないと思いますし、リスクを許容できないと思います。
② 理系出身でないと厳しい
プログラミング=数学というイメージ。
SEに必要なのは高度な数学力よりも「論理的思考(ロジカルシンキング)」です。
文系出身の女性SEは非常に多く、顧客の要望をヒアリングする「言語化能力」において、文系出身者が高く評価されるケースも多々あります。

情報系を学んできた人の方がシステムの仕組み理解がある程度進んでいるため就職で有利です。
情報系を学んできた方なら分かってもらえると思いますが、論理的にシステム構築を考えることが出来ないとシステムは動きません。またクライアントが作りたいシステムをどう作るか論理的に考えないと当初考えていなかった突発的な作業が発生してしまいます。
③ ライフイベントとの両立が難しい
結婚や出産を機に、現場を離れなければならない。
むしろ逆です。ITスキルは「どこでも働ける武器」になります。
多くのIT企業では産休・育休からの復帰率が90%を超えており、時短勤務やフルリモートを活用してキャリアを継続する女性が急増しています。

他の業界と比べて時短勤務やフルリモートを活用している女性社員は多い印象です。
ただし、それまでにある程度の能力が身についていないと残業しないと与えられた仕事が終わらない場合が発生してしまうかもしれません。
その影響で周りの社員に迷惑をかけてしまい「会社に在籍し続けていいのかな?」と思ってしまうことがないよう仕事を早めに覚えていち早く戦力になることがおすすめです。
④ ロジカルすぎるコミュニケーションが合わない
エンジニアは理屈っぽくて、感情的なやり取りができない。
確かに論理的な説明は求められますが、システム開発は「チームプレイ」です。
相手の意図を汲み取ったり、チームを円滑に回すための「ソフトスキル」が得意な女性は多いと思います。そんな人は男女問わず現場で重宝されます。

例えば営業職と比較するとSE職は理屈っぽいと感じる場面が多いと思います。
それでも人と話すことが好きな人やチームメンバーのことを考えて行動できる人が多いためコミュニケーションが好きな人はスムーズに仕事ができます。
「人と話すのが苦手だからエンジニアになりたい」と考える方もいますが、実はコミュニケーションを避けたい人ほど、実務で壁にぶつかる場面が多くなります。
⑤ 常に学習し続けなければならない負担
プライベートを削ってまで勉強し続けるのは大変。
これは男女共通の課題です。ただ、IT技術は一度基礎を身につければ、あとは差分をアップデートするだけです。
知的好奇心が強い人にとっては、これほど退屈しない仕事はありません。

資格が全てではないですが、基本情報技術者試験はキャリアを積みたいなら最低限取っておきたいです。会社の中でより上に行きたい方は応用情報技術者試験を数年後に合格できるように学び続ける必要があります。
また資格以外にも数年でプロジェクトが終わり別のプロジェクトにアサインされます。その際に新しいプロジェクトの仕組みや業界理解をしていかないとシステムを設計・構築・運用・保守と動かしていくことが出来ないため学び続ける姿勢や仕組みづくりが大切です。
人事が教える「本当にSEに向いていない人」の特徴

「女性だから」ではなく、「性格や考え方」においてSEに向いていない人の特徴は存在します。
以下の3点に当てはまる場合は、少し注意が必要です。
- 変化を極端に嫌う人:
IT業界は3年も経てば技術が様変わりします。新しい知識を吸収することにストレスを感じる人には、厳しい環境かもしれません。 - 「なんとなく」で解決しようとする人:
プログラムは1文字ミスしただけで動きません。「なぜこうなるのか?」を論理的に突き詰めるのが苦手な人には、苦痛に感じることが多いです。 - 1人で黙々と作業したいだけの人:
SEは意外にも会議や調整業務が多い仕事です。人と関わらずにコードだけ書いていたいという思い込みがあると、ギャップに苦しみます。

②の1文字のミスでシステム全体を止めてしまう可能性があるため論理的な力は向上していく必要がある力です。
ライフステージ別:女性SEのリアルな1日のスケジュール

「SEってずっとパソコンにかじりついているの?」という疑問に答えるべく、キャリアステージの異なる3名のモデルケースを紹介します。
① 若手時代(1〜3年目):スキル習得と現場に慣れる時期
入社間もない頃は、先輩のサポートを受けながら、まずはプログラミングやテスト工程を確実にこなすことがメインです。
- 9:00出社・テレワーク開始
メールチェックと当日のタスク整理
- 9:30チーム朝会
進捗報告と「相談事項」の共有
※特に1年目はチーム朝会や開発作業中などにいかに質の高い質問や相談を上司に沢山できるかが評価や成果物を高品質にするために重要 - 10:30開発作業・デバッグ
先輩のレビューを受けながらコードを書く
※自分のレビューでこれまでどんな指摘を受けてきたのかを分析するために管理しているととても良い。 - 12:00ランチ
同期やチームメンバーとリフレッシュ
- 13:00開発作業・ドキュメント作成
午後は集中して作業。週に数回勉強会も
- 16:00進捗レビュー・有識者レビュー
作成したプログラムを先輩にチェックしてもらったり、完成したものを有識者にチェックしてもらう
※有識者レビューは最初は緊張すると思うが一生懸命準備して話せばOK! - 18:30退社(終業)
定時+1時間程度の残業。帰宅後は趣味や勉強の時間
② 中堅・リーダー(5〜8年目):チームを動かし、調整に走る時期
後輩の指導や、顧客との打ち合わせが増える時期です。コードを書く時間よりも「考える・話す」時間が増えます。
一日5件打ち合わせで打合せしてたら一日が終わるなんてことも出てきます。
- 9:00出社・テレワーク開始
メールチェックと当日のタスク整理
※だいたい昨日の退勤後に重要なメールが届いており、早急に対応しないといけなくなり今日も残業か。。となる。 - 9:30チーム朝会
進捗報告と若手社員の「相談事項」の確認などチームの状況整理
- 10:00顧客Aとのオンライン会議
新しい機能の要件定義や進捗説明
- 12:00ランチ&休憩
午後の打ち合わせ資料をチラ見したり、ランチが終わったら少しの睡眠
※残業確定コースのため少しでも体力回復に努める。 - 13:00設計書の作成・レビュー
メンバーが書いた設計書をチェック
- 14:00顧客Bと打ち合わせ
進捗状況や今後の流れについて確認及び説明
- 15:00他チームとの打ち合わせ
設計作業をするにあたり、他チームが担当するシステムがどう動くのか確認をする。
- 15:45チャットの鬼返信
午後打合せが沢山あり、気づいたら数十件たまっていたチャットに猛返信する。
- 16:00メンバーフォロー
進捗が遅れている後輩の相談に乗る
※想定以上に送れている場合は相談のみではなくサポートするために引き継ぐパターンがある。 - 17:00トラブル対応・調整
不測の事態のスケジュール調整
※メンバーの進捗遅れのサポートや顧客からの新規要件の対応によるスケジュールの見直しなどをする。 - 20:00退社(終業)
責任ある立場なので残業発生。定時で帰れることはかなり少ない。定時で帰りたい場合は、事前にこの日は定時で帰るとチームに共有必須。
③ ママさんエンジニア(時短・フルリモート):効率重視の時期
「SEは育児と両立できない」という説を覆す、最も効率的な働き方です。
- 09:00テレワーク開始
通勤時間がない分、時間を有効活用。日によってはフレックスで出社時間をずらすことも。
- 9:30チーム朝会
オンラインで参加。稼働時間を伝え優先タスクを確認
- 10:30開発作業・デバッグ
後輩の成果物レビューや自身の開発作業をする
- 12:00昼食・家事
休憩時間に洗濯物を取り込むなど時短の工夫
- 13:00開発作業・ドキュメント作成
集中力が勝負。残業ができないため無駄を省き短時間で成果を出す
- 16:00時短勤務終了・お迎え
リーダーに進捗報告し、問題なければ「お先に失礼します!」とチャットで挨拶
女性がSEとして働くメリットと将来性
人事の視点から見て、女性がSEを選ぶメリットは非常に大きいです。
- 市場価値の高さ(高年収):
他職種に比べ、専門スキルがあるSEは平均年収が高い傾向にあります。 - 働き方の柔軟性:
「PC1台で仕事ができる」強みは、将来の引っ越し、育児、介護などの際、強力なバックアップになります。 - ライフイベントに左右されない「個の力」:
万が一、会社を辞めることになっても、スキルさえあればフリーランスや再就職が容易です。

能力があれば、時短でも十分な報酬を得ることができますし、働き方が柔軟なポイントはとても良いですね!
将来的に会社員ではなく、フリーランスとして個人で稼ぐことも十分可能ですし、会社を作ることもできる職種です。
失敗しないための企業選びとキャリアプラン

これからSEを目指す方が、ブラック企業を避け、長く活躍するためのチェックポイントです。
ロールモデルや制度の実績確認
ロールモデルや制度の実績があるかどうかは、働きやすさの鏡です。

制度としてはあるけど、実績がない場合はその制度の初めての人になる可能性があり、制度を取得しずらく大変なことになる可能性があります。
例えば以下のような点です。
- 仕事を頑張っていきたいなら女性管理職の割合を確認し、男女関係なく上を目指せる環境があるのか?
- 産育休の実績は?(育休取得率と取得期間など)
平均残業時間と有休消化率をチェック
実際の数字を確認しましょう。平均残業時間であればIT業界は10時間未満、有給消化率は70%以上であれば平均的です。
研修制度の充実度
未経験の場合、最低でも2〜3ヶ月の研修期間がある企業を選びましょう。

また研修がどのレベル感で行われているかは確認するようにしましょう。
未経験レベルの研修が3カ月あると思っていたら、実際はプログラミングがある程度理解できるレベルで研修が進む場合などがあるからです。
カジュアル面談を活用する
実際に現場で働く女性エンジニアと話す機会をもらい、リアリティを掴みましょう。

会社によって、雰囲気が全然違うと思います。人事の人の話だけを鵜呑みにするのではなく、現場で働く女性エンジニアと話すことで、人事の話が本当なのか?の確認や自分のライフプランのイメージづくりを固める場を作りましょう!
まとめ:自分らしいキャリアを築くために
「女性だからSEに向いていない」という言葉は、もはや過去の遺物です。
現代のIT業界は、性別に関わらず、柔軟な発想と論理的な思考を持った人材を渇望しています。
新卒や転職でこの道を選ぼうとしている皆さんは、ぜひ自信を持って挑戦してください。
確かに学習の壁や現場の苦労はありますが、それを乗り越えた先には、「自分らしい自由な働き方」が待っています。
【人事から一言】
もし、あなたが今のキャリアに不安を感じているなら、まずは小さなプログラミング体験やIT資格の勉強から始めてみてください。その一歩が、あなたの未来を大きく変えるかもしれません。
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