シリコンバレーで再び脚光を浴びる「996」
ここ数か月、かつて中国のテック業界を象徴したスローガン「996(9時〜21時、週6日)」が、シリコンバレーやアメリカの一部スタートアップ界隈で再び注目を集めています。
メディアは「グラインド(grind)文化」や「ハッスル礼賛」がAIブームや資金競争と結びつき、企業や創業者のなかに“より長時間・よりハードに取り組むこと=成功の近道”という価値観が広がっていると伝えています。求人広告や経営者の発言のなかには「週70時間以上働ける人材を歓迎」といったメッセージも見られ、採用・組織運営の現場にまで影響を及ぼし始めていると報じられています。面接では「週70時間働けますか?」と質問をすることも珍しくないそうです。
しかし同時に、従業員や労働団体からは健康リスクや持続性に対する強い懸念も表明されています。議論の熱は「長時間労働を称賛すべきか」「短期的な成果と引き換えに失うものはないのか」という論点に集中しており、シリコンバレーの働き方を象徴する新たな論争となりつつあります。
「996」とは何か ― 起源と背景
「朝9時から夜9時まで、週6日働く」という勤務スタイル
週に72時間以上の労働を強いる働き方で、中国のIT業界、特にアリババやテンセント、スタートアップ各社で定着したといわれています。
この言葉が世界的に知られるようになったのは、2019年に中国のエンジニアたちがGitHub上で「996.ICU」という抗議リポジトリを立ち上げたことがきっかけでした。
「996を続ければICU(集中治療室)行きになる」という強烈な皮肉を込めた運動は国際的な支持を集め、企業の対応や労働法違反をめぐる議論にも波及しました。
アメリカで注目される理由
アメリカのスタートアップ、とくにAIやテック分野では「スピードが命」といわれます。資金調達や市場投入の競争が激しいため、創業者や投資家の一部は「徹底的にコミットできる人材こそ成功の原動力」と考えがちです。そこに中国発の「996」という言葉が紹介され、極端な働き方の代名詞としてアメリカでも使われるようになりました。
ただし、米国の場合は「賛美」と「批判」の両方が混在しています。一部の創業者は「情熱があるなら996も当然」と語りますが、労働者や専門家からは「成果どころか逆効果」「採用競争力を失う」といった指摘も強まっています。
996が抱える問題点
996勤務が問題視されるのは、単に長時間労働だからではありません。
人事が捉えるべき視点
人事担当者としては「996的働き方」が話題になっている背景を理解したうえで、短期的な成果と長期的な持続性のバランスをどう取るかが重要です。
シリコンバレーの一部で流行する「996」文化をそのまま取り入れるのではなく、むしろ反面教師としながら「成果と働きやすさを両立させる」企業文化をどう築くかが問われています。
「996」をあえて取り入れに行くとしたら納得してもらえるだけの待遇を用意する必要があります。
引用元・参考
‘Would you work 996?’ Hustle culture trend gains ground in Silicon Valley
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