ニュースの概要:早期希望退職者1483人応募
ジャパンディスプレイ(JDI)は9月5日、5月に公表した希望退職者募集に対して1,483人が応募したと発表した。経営不振による構造改革のため、国内従業員の半数超にあたる約1500人を削減すると発表していた。希望退職に伴う費用として2026年3月期に約95億円を特別損失として計上する。
3月末時点の国内従業員数は2,639人で、希望退職者は全体の6割にあたる。稼働停止を予定する茂原工場(千葉県茂原市)を含む国内の各拠点が人員削減の対象。国内従業員数は最終的に約1000人となる見込みだ。
生産拠点の閉鎖も進められており、茂原工場(千葉県)の生産も終了し、売却を検討しているとのこと。全国に6つあった生産拠点は、今後、石川工場のみとなる見通しです。
海外では米国や欧州、中国などにディスプレーの販売会社を展開し、従業員数は1500人規模。海外でも人員削減をすすめており、同日、83人が応募したと発表した。年間135億円の人件費の削減を見込む。JDIは赤字経営が続き、生産拠点の集約や人員削減などの構造改革を進めている。
2025年4-6月期連結決算で、当期損益が202億円の赤字(前年同期は65億円の赤字)に拡大した結果から茂原工場(千葉県茂原市)の生産終了や今回の早期希望退職に関する費用の一部を特別損失として76億円計上していた。

JDIってどんな会社?「日の丸液晶」の栄光と苦境
まず、JDIがどんな会社なのかを簡単に見ていきましょう。
JDIは、2012年にソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶パネル事業が統合して誕生しました。官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)いわゆる国が主導したプロジェクトだったことから、「日の丸液晶」とも呼ばれ、日本の技術を結集した企業として大きな期待が寄せられていました。
当時は、スマートフォンの普及期で、高品質な液晶パネルの需要が世界的に高まっていました。JDIは、高い技術力を武器に、特にiPhone向けの液晶パネルで存在感を示していました。 しかし、時代は急速に変化します。
- ライバルの台頭
中国や韓国のメーカーが、安価で高性能な製品を次々と市場に投入。激しい価格競争が始まりました。 - 技術の進化
液晶に代わり、より高画質で省電力な有機EL(OLED)ディスプレイが主流に。特にスマホ向けは有機ELへの切り替えが進み、JDIの主力製品の需要が縮小しました。
これらの変化に対応しきれず、JDIは2014年の上場以来、赤字経営が続いています。
JDIは統合企業としての役割を終えて、車載を除き液晶パネル製造や有機ELパネル製造からも手を引くとのこと。
- 中小型液晶ディスプレイ(スマートフォン、タブレット、車載ディスプレイなど)を中心とした開発・製造・販売。
- 医療・産業用途向けディスプレイ、センサーなどの関連機器も手がける。
人事目線で感じたこと
ソニー、日立、東芝の優秀なエンジニアたちが次々と会社を去っていくのは悲しいですね。本来であれば早急に利益率を上げていくための施策を整理して世代の古いパネル工場を占めていれば様々な展開があったのかもしれません。
希望退職や事業の衰退に関して残念な部分がありますがJDIが公表したリリース(2025年2月12日){題名:茂原工場でのパネル生産終了及び同工場の AI データセンター化、並びに石川工場への生産集約及び MULTI-FAB 化のお知らせ}を見ると今回の措置は茂原工場での生産終了に伴うもので、石川工場への生産集約(MULTI-FAB化)や「BEYOND DISPLAY」への進化を遂げるための新たな戦略などの構造改革の一環であると報告しているため、ある程度の意図を持った整理であることが分かります。
短期的には技能流出や供給リスクの懸念が残るため、現場の人員配置や顧客への供給確保をどのようにするのか人事的にも経営的にも大変だと思います。
赤字が出ている中で社員を最大限守るために希望退職を募っている点は人を大切にしている会社であると感じます。ブラック企業は自己都合退職で辞めさせると思うので。。
このニュースを見て別会社の人事が検討することは以下の点です。
- 次の職場を探している希望退職者(製造系や研究開発をしている技術者)に対して、就職や面談のアプローチを試みる。
⇒これはダイレクトリクルーティング系のスカウトでも要チェックしながら見るのが良いでしょう。
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