三菱電機が黒字リストラ 53歳以上、募集人数定めず

三菱電機は8日、満53歳以上といった条件を満たす正社員と定年後再雇用者を対象に退職金の割り増しなどで社外への再就職支援を実施する希望退職を募集すると発表した。募集人数は定めない。
今年4月に発表した2025年3月期決算は売上高と営業利益が過去最高を更新することに加え、2026年3月期に最高益を予想する中で業績は好調。しかし、事業構造の見直しを進め、人員構成の若返りを図るために希望退職に踏み切る。業績が好調な中で人員削減を行う「黒字リストラ」を行う企業が国内で相次いでいる。
社内の年齢層が高めに偏っているといった人員構成上の課題に対処し、次世代への継承を推進するとしている。26年3月15日時点で満53歳以上かつ勤続3年以上の人が対象。正社員で約8千人、定年後再雇用者は約2千人が該当する。 希望する正社員には外部専門会社による再就職支援も提供する。
- 三菱電機が黒字リストラ 53歳以上、募集人数定めず(https://news.yahoo.co.jp/articles/d9954536a63c685b8e949abc287181f358120308)
- 黒字なのに人員削減 なぜ? 識者「珍しいことではない」(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6551814)
- 三菱電機、国内グループで千人規模の人員削減検討へ 業績は黒字(https://www.asahi.com/articles/AST983G63T98ULFA028M.html)
そもそも「黒字リストラ」って何?
会社が利益を出して黒字なのに、人員整理またはリストラクチャリング(再構築)を行うことを指す言葉
“リストラ”は業績不振とともに行われる人員削減ですが、黒字リストラは立て直しのための人員整理というより、人員の新陳代謝を目的として行われます。年功序列をもとにした賃金体系により、多くの日本企業がミドルシニア層の人件費にコストを割いています。これを若い世代に再分配することで、健全な組織風土を醸成させることが狙いの一つです。
黒字リストラが発生する3つの主な理由
「企業が利益を出しているのなら、雇用を維持すべきではないか」というご意見はもっともです。しかし、企業経営においては、「現在の利益」だけでなく、「将来にわたって利益を出し続けられるか」という長期的な視点が非常に重要となります。
特に、三菱電機のような大規模な企業の場合、より長期的な戦略に基づき、以下の理由から「黒字リストラ」という判断を下すことがあります。
理由1. 産業構造の変化と事業の将来性
第一の理由は、時代の変化への対応です。テクノロジーの進化や市場のニーズは急速に変化しており、これまでの中核事業が将来的には縮小していく可能性がございます。その際、当該事業に関わる人員の配置をどのように見直していくかという課題に直面します。
例えば、特定の事業が現状は黒字であったとしても、 市場全体が縮小傾向にある場合、そのまま人員を維持し続けることは、将来的に大きな赤字リスクを抱えることにつながりかねません。そのため、現段階で人員配置を最適化し、将来性のある新たな分野へ経営資源を集中させようとするのです。
これは、企業全体を守るための事業ポートフォリオの見直しであり、いわば「予防策」としての側面が強いものです。
理由2. 企業に求められる「生産性の向上」
第二の理由は、生産性の向上です。これは、「いかに少ない人員で、より大きな利益を生み出すか」という経営効率の追求を意味します。
日本の多くの企業はこれまで、終身雇用を前提とした経営を行ってきました。これは日本企業の強みでもありましたが、グローバルな競争が激化する現代においては、より効率的な経営体制を構築することが求められています。
たとえば、ITツールの導入や業務の自動化(DX)が進むと、これまで人が手作業で行っていた業務が不要になることがあります。その結果、業務量が減少し、必要とされる人員も少なくなるのです。
企業は、時代に即した効率的な組織体制を築き、国際競争力を維持するために、人員の再配置や、時には人員整理を検討せざるを得ない状況に置かれています。
理由3. 投資家からのプレッシャー
第三の理由は、投資家の存在です。上場企業は、株主(投資家)からの期待に応える義務があります。投資家は、企業が継続的に成長し、より高い収益を上げ続けることを期待しています。
たとえ企業が現在黒字であったとしても、投資家からは「もっと効率的な経営を行い、企業価値を高めてほしい」というプレッシャーがかかることがございます。
特に「ROE(自己資本利益率)」という指標が重視されており、これは「いかに効率的に利益を上げているか」を示すものです。人員が過剰であると、このROEが低下する要因となり得ます。投資家の期待に応え、より高いROEを目指すために、事業の効率化、すなわち人員整理に踏み切るケースも存在します。
このように、短期的な利益だけでなく、長期的な企業価値向上を目的として、外部からの圧力も要因の一つとなるのです。
会社員としてどのように向き合うべきか
「では、私たち会社員はどのように対応すればよいのか?」と不安を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、黒字リストラの背景を理解することは、今後のキャリアを考える上で重要なヒントとなり得ます。
大切なのは、「企業に必要とされる人材であり続けること」です。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 現在の業務における専門性を高め続けること
- 新しいスキルや知識を積極的に習得すること
- 自身のキャリアプランを企業に依存せず、自律的に考えて構築していくこと
これらが、変化の激しい現代を生き抜くための強力な武器となります。会社の業績がどうであれ、自分自身の市場価値を高めることが、何よりも重要であると言えるでしょう。
まとめ:「黒字リストラ」は未来への投資
最後に、今回の内容を簡潔にまとめさせていただきます。
- 黒字リストラとは:
企業が利益を出しているにもかかわらず、人員整理を行うことです。 - その背景:
- 産業構造の変化:将来性の乏しい事業から、成長分野へ経営資源を移行するため。
- 生産性の向上:DXなどを通じて業務を効率化し、少ない人員で大きな成果を出すため。
- 投資家からのプレッシャー:効率的な経営を求められ、企業価値を高めるため。
三菱電機のような大企業でさえ、時代の変化に適応するために大胆な決断を迫られています。だからこそ、私たちも「会社は絶対的に安泰ではない」という現実を認識し、主体的なキャリア形成を意識することが不可欠です。
今回のニュースが、ご自身の働き方について見つめ直す良いきっかけとなれば幸いです。
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