役割等級制度のすべて:従業員が担う役割の大きさに基づき、格付けや処遇を決定する人事制度~処遇制度③~

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人事の皆さん、こんにちは!今回は、近年多くの日本企業で注目されている役割等級制度について、その本質から導入の意義、そして評価・賃金制度への影響まで、詳しく解説していきます。メンバーシップ型からジョブ型への転換を検討されている企業にとって、役割等級制度は非常に有効な選択肢となりますので、ぜひ最後までご覧ください。

役割等級制度とは

役割等級制度とは、その名の通り、従業員が「どのような役割」を担っているかという基準に基づき、個人の格付けや処遇を決定する人事制度です。職務等級制度と同様に「仕事基準」の人事制度に分類されます。

この制度の根幹となるのが「役割等級」です。役割等級は、従業員が組織の中で果たしている役割の「大きさ」によって決まります。多くの場合、組織における役割分担は役職と連動しているため、役割等級の格付けも役職を基準に判断することが一般的です。ただし、同じ役職名であっても、部署の特性や事業規模などによって、付与される役割等級を区別することもあります。

重要な点は、役割等級制度が「仕事基準」であるということです。つまり、たとえ従業員が個として成長したとしても、その担う役割自体に変化がなければ、役割等級が昇格することはありません。

役割等級制度の導入意義

役割等級制度は、「日本的ジョブ型人事制度」と呼ばれることがあります。その理由は、「役割」と「職務」という概念の違いにあります。

「職務」が具体的な業務内容やタスクそのものを指すのに対し、「役割」はその仕事の「目的」を表します。役割のほうが職務よりも抽象度が高く、解釈の柔軟性があるのが特徴です。

厳密に個人の担当職務を定義する必要がある職務等級制度は、多くの日本企業にとって導入・運用面で高いハードルとなることがあります。しかし、役割等級制度における「役割」は、「仕事の目的に関係するものは本人が対応すべき役割に含まれる」と柔軟に解釈できるため、職務等級制度ほど詳細な職務定義がなくてもスムーズな導入・運用が可能です。

この柔軟性こそが、メンバーシップ型から段階的にジョブ型への移行を目指す企業にとって、役割等級制度が採用しやすい人事制度であると言える所以です。

役割等級制度における人事評価制度

役割等級制度における人事評価は、職能資格制度と比較して「役割達成度」に強くフォーカスされます。当該役割等級が実現すべき重要な役割(通常5~10程度)が、そのまま人事評価項目となることが多いです。

主な役割(部長級の事例)代表的な評価項目
所管部門の計画達成部門計画達成
所管部門の方針策定設定した方針の有効性
設定した方針の実現性
所管部門の業務管理業務の進捗管理
リスクマネジメント
所管部門の人事管理チームビルディング
組織的な人材育成
後継者育成
職場環境整備
全体への貢献他部門との協働推進

この「役割」には、単なる結果(成果)だけでなく、そのプロセスで果たすべきものも含まれます。そのため、役割等級制度の人事評価項目は、階層や職種(営業職、開発職、生産職、事務職など)によって異なる項目を設定することが一般的です。

もちろん、これも「仕事基準」であるため、「プロセスにおける努力の度合い」や「成績の要因となる能力の発揮状況」といった属人的な要素を直接的に問うことはありません。あくまでも「役割を果たしたか否か」という観点で評価するのが基本となります。

役割等級制度における賃金制度

役割等級制度の基本給(役割給)の基準額は、能力などの属人的な要素ではなく、原則として役割等級ごとに決定されます。「高役割等級=高役割給」となるように設計するのが一般的です。

役割給には、役割達成度を反映させて変動させるケースもあります。その場合、期待通りの役割達成度(100%達成)を基準額とし、各人の達成度に応じて加減算が適用されます。なお、この加減算の程度は、職務等級制度における職務給のそれよりも小さいことが多いです。

また、職能資格制度の基本給(職能給)とは異なり、定期昇給を行う場合は、等級変更するほどではない程度の「役割拡大」「役割の高度化」「所管部署の拡大」などが反映されることが多くなります。

各等級のレンジレートについては、グローバル企業では市場価値に基づいて柔軟に運用することもありますが、日本企業では等級間の重複を避けるパターンが一般的です。

ちなみに、役割等級制度を導入している企業でも、メンバーシップ型と同様に賞与を支給します。職能資格制度と異なるのは、賞与の算定基礎を月給と切り離して一層役割の違いを明確化させたり、役割達成度に基づくメリハリを大きくしたりする点にあります。


役割等級制度は、企業の人材戦略と深く連動し、従業員のエンゲージメント向上にも寄与する可能性を秘めています。貴社の人事制度を検討する上で、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

役割等級制度の導入について、さらに詳しく知りたい点や、貴社の状況に合わせたご相談などがあれば、ぜひお気軽にお声がけください。

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