2022年の法改正以降、「パパ育休」を取得する男性は急増しています。
2024年度の男性の育児休業取得率は40.5%で過去最高を記録しました。
「家庭の時間を大切にしたい」「子育てにしっかり関わりたい」という想いはもちろん、家事・育児の初期段階を夫婦で支え合うメリットが広く知られるようになったからです。
しかし、まだあまり知られていない事実があります。
育休中でも“条件付きで働くことができる”ということ。
もちろん、育休の目的は「子どもの養育」。
だから、好き勝手に働けるわけではありません。
でも、
こんなケースは実際に多く、法律上も「例外的に働くこと」が認められています。
本記事では、これから育休を取るパパ向けに、“どこまで働くのがOKで、どこからNGなのか”を解説します。育休取得したいけど、どうやって上司を説得しようと思っている方に参考になる記事になれば幸いです。
育児休業期間中の勤務は一時的・臨時的であれば就労日数が月10日以内または10日を超える場合は就労時間が月80時間以内を上限に勤務することが可能。
育児休業給付を減額せずにもらうためには賃金月額の13%もしくは30%までならOK
育休中に働くことは可能?答えは「条件付きでYES」
厚生労働省のガイドラインでは、
労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできます。
と記されています。

下記厚生労働省のサイトにしっかりと明記されています。

つまりポイントは次の2つ。
① 会社と本人の合意があることが絶対条件
会社が一方的に「ちょっと出勤して」と言うのは完全にアウト。
必ず、本人の同意 → 会社との確認 の順で進めます。
② 一時的・臨時的であること
「毎週水曜の午前だけ働く」のように、継続的だと育休と認められません。
あくまでスポット対応が前提です。

意外とパパ含めプレパパが知らない情報ではないでしょうか?
育休を分割で取得することが出来ること以外にも上記理由で突発的な業務がある場合は毎月勤務することが出来るのです。
育児休業給付金はどうなる?
ここが最も気になるところですよね。
実は給付金には明確なルールがあります。
給付金に影響しない“目安”
このどちらかを満たしていれば、原則として給付金の支給対象になります。
逆に、
などの場合、「復職扱い」と判断されて給付金が止まる可能性があります。
【重要】勤務日数によっては育児休業給付金の減額対象になる
厚生労働省が出している別資料に”育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について”育児休業給付金の支給条件についての記事があるので重要な部分を抜粋します。
より詳しく知りたい方は以下を参照ください。
各支給単位期間に支払われた賃金がある場合の支給額について

賃金(※5)が賃金月額の13%(30%※6)) を超えて80%未満の場合
[賃金月額×80%]と賃金の差額が支給額となります(減額支給となります。)

と書かれています。
つまり、育児休業給付金+育休中に働いた賃金が賃金月額の80%未満にしないと減額対象になるのです。
少しややこしい話であるため、具体的な例を使い説明します。
賃金月額30万円の一年間育休を取得するパパを仮定します。
※育休期間は4月1日から翌年3月31日までの一年間で計算します
パターン①:育児休業3カ月目のタイミングに緊急対応の仕事の依頼が来てパパが同意をして3日間勤務した場合(7月7日、8日、9日の3日間1日勤務)
この場合、日給がおよそ、13,636円です。(300,000/22日=13,636円/日)
3日働いたため、7月の給与は合計13,636*3=40,908円です。
7月分支給の育児休業給付金は300,000円(月額賃金)*67%=201,000円です。
7月分の育児休業給付金と給与合計は241,908円(40,908円+201,000円)です。
これは、賃金月額30万円の80%(240,000円)を1,908円分超過した金額です。
育休期間中はこの人の場合、育児休業給付金と給与合計が240,000円を超えることが出来ないため、
7月分の育児休業給付金が1,908円分減額された199,092円が支給されることになります。

上記の例も少し難しいため、以下のように覚えておけばよいと思います。
育児休業給付金が月額賃金の67%もらえる期間(育休開始から180日目まで)は2~3日の突発的な業務なら育児休業給付金と給与が満額貰える可能性が高いです!
育児休業給付金が月額賃金の50%もらえる期間(育休開始180日以降)は6~7日の突発的な業務なら育児休業給付金と給与が満額貰える可能性が高いです。
つまり、育児休業給付を満額貰いながら働くためには、育休期間中に突発的な業務であれば育休開始180日目までは2~3日毎月勤務がおすすめです。※育休開始180日目以降は6~7日毎月勤務することが出来ます。

上司から育休取れないよと言われた場合、こういった方法なら大事なお客さんとの営業はできますし、引継ぎも十分できますと言える一つのアイデアになるのではないでしょうか?
では、どんな働き方ならOKなのか?
以下のような働き方は、実務上「育休中の臨時的就労」として扱われやすいです。
緊急のシステムトラブル対応
突発的に発生した緊急のシステムトラブル対応で育休取得者のみしか対応できない場合など。
イベント当日のサポート
会社の事情で数名しか作業できないイベントの対応でどうしても参加してもらいたい場合。
知識・スキルが必要な専門性の高い業務
その人にしかできない作業を短時間だけ依頼するケース。
産後パパ育休中の一部勤務(事前合意がある場合)
制度上、一定の条件下で部分的な就労が想定されています。

詳しい情報は下記リーフレットを参考にしてください。
NG例(気をつけたい働き方)
上司や会社からの「暗黙の圧力」による出勤
合意がなければ違法です。
毎週○曜日の午前だけ働く
定期勤務になるため、育休ではなく「時短勤務」扱いに近づきます。
月80時間を超える働き方
給付金が停止される可能性が非常に高いです。
実務で使える!育休中に働く場合の進め方ガイド
1. まずは会社に相談(メールの例)
○○部 ○○です。
育児休業中に、△△業務について月○回程度のスポット対応を検討しております。
育児休業の趣旨を損なわない範囲で、一時的就労の合意形成をお願いできますでしょうか。
条件(回数・時間・対応内容)がまとまり次第、ハローワークにも確認いたします。
よろしくお願いいたします。

上記は基本的に労務管理を担当している社員の対応のためハローワークの確認作業はよほどのことがない限り発生しないと思いますが、もし必要があればハローワークに問い合わせをしましょう。
2. どれくらい働くかを数値で整理する
曖昧にせず、具体的な数字で伝えるのがトラブル回避の鍵。
3. 合意内容をメールで残す
口頭だけはNG。後で「言った/言わない」問題になります。
4. 就労記録も必ず残す
出勤簿などの記録が曖昧だと、給付金の審査で不利になることがあります。
よくある質問
- Q在宅で数時間なら毎日できる?
- A
毎日だと「恒常的」とみなされやすいためNG。月10日以内を目安に調整しましょう。
- Q土日だけならOK?
- A
曜日の問題ではなく「頻度」と「時間」が重要です。
記事のまとめ
パパ育休は、家庭と仕事の新しいバランスを作るチャンスです。
制度をよく理解した上で、安全に・賢く育休を活用していきましょう。
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